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アサドリの日記帳です。主にロックマンと日常。
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2007/12/23  浮上



よいお年をとか言ったその舌の根も乾かぬうちに戻って来ちゃったんだぜ。

生きてますアサドリです。
何かこうあまりにも辛抱たまらなくなって小説書きました。途中だけど。
オブサワさんのところで半年以上出しっぱなしにしてた
ルーラーズ小説の続きです。ようやく。
20周年だから何かやりたかったんだよ。

ついでに勢い余って20周年ストラップと15周年ストラップと
マグカップと本家7・8サントラをe-CAPCOMで注文しちまったんだぜ。
悔いなんてないんだ。だって20周年なんだ。

何より、私がいない間に本家ロックマン界に大激震が走ったようで。
おめでとうみんな。ありがとう先生。やはり20周年は伊達じゃないね。
発売前に私も是非完結させたいもんです。Asteroidなんて言われて黙っちゃおれん。

とか言いつつまた沈みます。うう。
せっかく届いた海外コミック(封印中)の感想ぐらい書きたかったんだ。
たまってる塗り絵もやりたかったんだ。

では、せっかくなので最初からどうぞ。



プロローグ1 密林



 崩れた天井から屋根に上がると、すぐ横から突き出た、これも崩れかかった塔の上に人影が見えた。

 塔は彼の背丈の倍ほどもなかったので、機能の落ちた彼でも割合楽に登れた。最上部に手をかけると、相手は遠くを見たまま手だけをひらひらと挙げた。
「よーお、ミズカネさんかい」
「……よう。いつからだ」
 彼の問いかけに、相手は挙げた手の指を三本立ててみせた。
「三日」
「三日だ!?」
 柄にもなく頓狂な声を上げた彼に、相手はのんびりと返した。
「大声出しなさんな、消耗が早いぜ。大丈夫さ、ここから動いてねえからな。……でも、ま、さすがにそろそろ、しんどいやな」
 そういうと、相手は彼ににっと笑ってみせた。この男がこんな調子なのは昔からなので、彼はそれ以上答えずその隣に腰を下ろした。
「で、お前さんはいつ起きたんだい。ボスとは会ったかい」
 相手は、同じ問いを彼に返した。
「昨日だ、ちょうど入れ替わりに。……で、まだ吸ってるのか」
 彼は、相手の口元のキセルにあごをしゃくった。
「ああ、習い性でねえ。でもさすがに駄目だな、こう長いこと経ったタバコじゃ味がボケちまってただの煙だ」
「ボケたのはあんたの舌じゃないのか」
 かも知れねえな。苦笑いしながら相手がつぶやき――二人はひょいと下に目をやった。
 同じ気配を察したのだった。見れば、さきほど彼が出てきた天井――ここから見れば屋根――の穴から、二人を見上げる白っぽい人影があった。
「……なんだ、ノバシリじゃねえか。こっち来るかい」
 人影がうなずいたのを見て、相手は立ち上がった。
「じゃ待ってな、いま手、貸してやるから」
 相手が塔の崩れた外壁に足をかけて降りていくのを、彼は少々気をもみながら見守った。ずっとここにいたとは言え、三日も経てばエネルギーにさほど余裕はないはずだった。
 が、相手は危なげもなく屋根の上にたどり着き、そこで待っていた人影に今降りてきた道を指してみせた。
「そこのな、崩れてるとこから登って行けよ。ほら」
 人影……ノバシリは、言われたとおり外壁に手をかけ、慎重に足場を探った。相手は下から支えるように、その体を押し上げてやった。
 ノバシリが手の届くところまで来ると、彼……ミズカネは上から手を伸ばし、その体を引き上げてやった。その体は馬鹿に軽く、あっさり塔に上がった。昔はこいつもすばしこかったんだが。ふとそんな考えがよぎった。
「そんじゃ、俺は寝に行くわ」
 下から呑気な声がする。見下ろすと、相手はもう穴の底でひらひら手を振っている。
「あ」
 手を振り返したミズカネの脇で、ノバシリが小さく声を上げた。
「トコヨ、わすれもの」
 見れば彼らのすぐ近くに、大きな輪のようなものが打ち捨てられている。
「……あら、いけねえ。投げてくれるか」
 それを片手で挙げ、ミズカネは下に声をかけた。
「おい、大丈夫か。重いぞ」
「心配ご無用、てめえの持ちもんだ。慣れてるよ」
「忘れたくせに」
 軽口を叩きながら、ミズカネはそれを穴に向けて軽く放った。
 相手……トコヨはそれを片手で受け止めたが、次の瞬間、勢いに振られて後ろによろけた。
「おい、大丈夫か」
「あーあ、参ったね。退散、退散」
 その輪をひょいと引っ掛けて、トコヨはまたにやりと笑ってみせた。
「行き倒れるなよ」
「おやすみ」
 上から声をかける二人にトコヨは手を振り返し、その姿はすぐに隠れてしまった。
 塔の上の二人に、沈黙が降りた。
 そういえば、こいつとは仲が悪かったっけな。
 ぼんやりとそんなことを思ったが、それはひどく現実味の薄いことのように思われた。果たして本当に自分がそうだったのか、それすら曖昧な気がした。
(……一体、俺たちには何が残っているのだろう?)
 何しろ、一切があまりに遠い遠い昔のことだった。
「……なあ、見ろよ」
 ミズカネは、眼下の光景を目で指した。
「何にもなくなっちまった……」
 その視線の先を、ノバシリはただ見ていた。
 そこには、視界の尽きるまで広がる樹海。




プロローグ2 その夜

 嫌だな。
 どう言い表せばいいんだろう。
 うつむきながら揺られて、もう二時間ほど走っているところだ。顔を上げても、薄ぼんやりした灯りの下に石のようにうずくまる人々が見えるばかりだから、目は床に落としたままにする。そういう自分もきっと、同じように見えているのだろう。
 言葉は、ない。屋根を叩く雨の音。鈍く規則的なレールの音。そんなものの中に、みなすっぽりと押し包まれていた。
 それは彼に、まるで海にでも沈んでしまったような錯覚を起こさせた。
(……いや、そればかりじゃないな)
 彼のすぐ左。
 積み重ねられ、ワイヤーで固定されたいくつもの箱。彼もよく知っている、ロボット移送用のカプセルだ。
 だが、妙だった。
 まず、電源が入っていない。
 カプセルに格納されたロボットを運ぶときは、ロボットの生命維持や内部温度調整等、細かい管理が常に要る。電源オフで運ぶなど常識外れどころか、考えられない。
 そして何より、中身がわからなかった。
 彼のセンサーは当代最先端の機能を誇る。壁越しに中の人やロボットを探知するなど朝飯前で、たとえ軍用カプセルと言えども中身を探るのは難しくないはずだった。が、さっきから何度スキャンをかけても、中の物体の素材はおろか形もわからないのだ。よほど強力な防護フィルターでも巻いてあるのかとも思ったが、そんな感触もない。
 空っぽ、なはずはない。これを護送するよう言われたのだから。
 その沈黙は、彼に言いようのない居心地の悪さを与えた。
(……嫌だな。どう言い表せばいいんだろう)
 その傍らでカプセルたちはことりとも音を立てず、棺桶のように暗がりに沈殿していた。

  *  *  *

 不意に車両がゆれ、ばちん、と妙な音がした。
 何が起こったのか、振り返るまでにはもうわかっていた。カプセルにかけてあったワイヤーが切れたのだ。その近くにいた人をとっさに突き飛ばし、彼もその場から飛びすさった。
 ついでカプセルの山の崩れる音。わあっと人声、沈黙の降りていた車内が初めて大きく動揺した。
 怒号のような指示が飛び、周囲の人影が慌てて詰め寄ってくる。
 いくつもの手がカプセルを起こそうとしたその時。
 ごとりとカプセルが動いた。
 瞬間、打たれたように全員が凍りつく。
 その眼前で、電源が入っていないはずのカプセルの蓋がゆっくりと開き始める。
 引きつったようなどよめきとともに人の輪が後退する。それに逆らうように前に出て、彼は使い慣れたバスターをカプセルに構えた。

「……気をつけろ、ロックマン!」

 名を呼ばれ、彼はカプセルを見据えたまま小さくうなずいた。
 その時、カプセルからひとつの影が立ち上がり……
 それは確かに、彼を見た。




第一章 その朝

「あ、おはようございます……あら」
 食堂に現れたドクター・ライトの姿を見て、ロールは表情をくもらせた。家の中ではいつも温厚で笑みを絶やさないはずのライトの顔が、今朝は沈んでいる。
「大丈夫ですか博士。……あの、ロックはまだ?」
「ああ。連絡がつかん」
「そうですか……」
 ロールはうつむいた。あまりいい知らせではない。
「でもよ、ロックだぜ? ほら、いつだって最後は無事に帰ってくるだろ。そんなに心配ねえって」
 テーブルの向こうから、カットマンが声をかけてよこした。
 現実はともかく、その明るい言葉はその場の空気をいくぶん軽くした。
「……そうね。今回はただの警備手伝いだって言うし、第一何か起こったら向こうの人から連絡入るわよね。もう少しだけ待ちましょ」
 よし、と声に出し、ロールは朝食の支度の続きにとりかかった。ライトも椅子から立ち上がり、コーヒーカップを取ろうと戸棚に手を伸ばす。
 ほどなく他のライトナンバーズたちもどやどやと姿を現し、日曜の朝はいつもどおりの趣きに立ち返った。
 棚のカップを探す仕草で一同に背を向けたライトの顔に浮かぶ、重い苦悩を除いては。

  *  *  *

 けたたましい破裂音。銃弾ががんがんと傍らの鉄壁に弾ける。
 傍らのドアノブをぐいと引く。腕の関節がぎしりと軋んだ。痛み。構わず、そのままノブを引きちぎる。銃声が止んだその間を逃さず相手側に投げ込む。爆弾と勘違いしたか動揺の声。
 その隙に、遅れていた部下たちがこちらに駆け込んできた。全員をさらに前の車両に走らせ、彼はもう一人と一緒に、車両連結部にありったけ弾丸を撃ち込んだ。

  *  *  *

「じゃ、行ってきますね博士」
「ああ。ロックのことは分かり次第連絡するから、心配せずに行っておいで」
 玄関口でひらひらと手を振る「一人娘」に、ライトは微笑んでみせた。
「あーあ、いいなあロールちゃん。ボクも行きたかったのに」
 閉まるドアを横目にソファでぼやくアイスマンをボンバーマンがつつく。
「バカ、遊びじゃなくてお歳暮の注文に行くんだろが。ロールとカリンカちゃんだけで充分じゃねえか」
「そうだけどさ、ついでにあれやこれや見るでしょ」
「そんなこと言ってお前、結局あの二人と出かけたかっただけじゃねえの」
「ちょっ、違うって!」
 思わず赤くなったアイスマンの横で、ガッツマンがにやっとした。
「ほお、今日はお嬢さん二人で水入らずか。そしたらダイブマンも置いてきぼりだな」
「あーらら、可哀想に」
 自ら「カリンカお嬢様特任SP」を買って出ている巨漢ロボットのやきもきする様子が目に浮かんだのか、ファイヤーマンが大笑いする。
「……あのな、どの道ロックが戻ってないんだ。楽しいはずないだろう」
 その会話に冷や水をぶっ掛けるようにエレキマンが割り込んだ。
 沈黙。この場の誰もがあえて触れずにいた話題だった。

  *  *  *

 乗り物……列車の走行速度が下がったのにはすぐ気づいた。
 速やかに行動を起こす必要があった。先ほどの連中は後部車両ごと置き去りにしてやったが、追っ手がかかるのは時間の問題だろう。
 彼は全員を呼び集め、一気に車両から飛び降りた。
 窓のない車両内部の暗さに慣れた彼らの目が光になじむまで、少しの間があった。

  *  *  *

「博士。もう一回通信入れたほうがいいんじゃないスかね、通じるかもしれないし。もしかしたら助けが要るかもしれないし」
 コーヒーを手にリビングに現れたライトに、カットマンが遠慮がちに声を上げた。
「どこでしたっけ依頼元。タナカ綜合警備保障でしたっけ? とりあえずやってみるだけでも」
「うむ……いや、やはりもう少し待とう。十時が契約終了予定時刻だから、そこで連絡がなければ問い合わせることにしよう」
 そう答えたライトの言葉の煮え切らなさに気づいた者は、その時点では誰もいなかった。
「……あと十五分か」
 ボンバーマンが時計を見上げた。

  *  *  *


 至近距離……目の前の、一段高い場所に大勢の人間。みな唖然と自分たちを見下ろしている。
 が、事態はすぐに急変した。
 鋭いサイレンの音。人波をかきわけて黒服の人影がばらばらと集まってくる。
 ぐずぐずしていられなかった。彼は鋭く指示を出し、人間たちのいる段に跳び上った。悲鳴。人垣が大きく二つに割れる。
 目の前の黒服を蹴散らし、彼らは疾走した。

  *  *  *

「博士、電話しましょう。もう十時半だ」
 ファイヤーマンに急かされ、ライトが受話器を取ろうとしたそのとき、唐突に電話が鳴った。
 飛びつくように受話器を上げて応答したライトだが、その表情はすぐに怪訝なものに変わる。
「……えっ? ええ、ええ……失礼、」
 送話口を手でふさぎ、彼はアイスマンに目を走らせた。
「RTV局からだ。テレビを」
「は、はい」
 あわててリモコンのスイッチを押したアイスマンの目に、臨時ニュースを伝えるアナウンサーの姿が飛び込んだ。
〈たった今入ったニュースです。○○駅六番ホーム線路上に武装したロボット集団が現れ、そのまま駅構内を移動している模様です。警察が付近一帯を封鎖し、利用者の避難とロボットの身柄確保に……〉
「……ちょっと、○○駅って」
「そこの駅ビルにロールが行ったとこだぞ」
 彼らがささやきあったそのとき、ライトの携帯電話が鳴った。
 ライトが応答するようエレキマンに目で伝え、エレキマンはすぐ電話を取った。
「はい、トーマス・ライトです」
〈ライト博士ご本人ですか?〉
「いえ、家族の者ですが」
 相手の妙な反応をいぶかしんだが、エレキマンはひとまず答えた。
〈タナカ綜合警備保障の者ですが、博士はご多忙ですか〉
「タナカ警備の! ……いえ、電話中です」
〈すぐに代わっていただきたい。いえ、失礼は承知しておりますが、可及的速やかにです〉
「は、はい」
 悪い予感がした。
 話が飲み込めないまま、それでもエレキマンはライトに携帯を差し出した。ロックが派遣された会社だ。
「博士、タナカ警備の方からです」
 その途端ライトの顔をよぎった何ともいえない表情を、その場の全員が確かに見た。
「ああ……失礼、急用です。また後ほど……ええ、申し訳ない」
 テレビ局からの電話を無理矢理とも言える言い方で切り、すぐさまライトは携帯に出た。
 二言三言話した、その顔がみるみる青ざめていく。
「はい、はい……分かりました」
 消え入るような声でそれだけ言うと、ライトは携帯から顔を離した。
 それで終わりかと思われたが、不意に携帯から声が響いた。ハンズフリーにされたようだ。
〈……ライトナンバーズの諸君、時間がないので端的に申し上げる。機密保持のためタナカ警備を名乗ったが、国家安全省だ〉
 その場の空気が大きく動揺した。
「えっ、え」
「国家安全……聞いてねえぞ」
 が、相手は構わず話を続けた。
〈昨夜から今日にかけて、ワイリーロボットの疑いのある虞犯ロボット護送の警備をロックマンに依頼していたが……ロックマンは死んだ〉
 その瞬間、全員の思考が確かに止まった。
 ――何だって?

  *  *  *

 天井の低い構内にがんがんと放送が流れている。言葉は聞き取れないが警報に違いなかった。
 悲鳴を上げて逃げ惑う人間たち。その間を縫うように走る。
 左の通路からどっと黒服が詰め寄ってきた。人間ではない。機械だ。
 使い慣れた武器をそちらに向け……
 撃った。
 轟音。彼の武器の中では低威力の砲弾だが、それでも殺到した連中が木の葉のように吹き飛ぶ。
 前方に目をやると、緑の髪……自分たちのリーダーが右に方向を転じるのが見えた。

  *  *  *

 ロックが死んだ。
 相手はワイリーのロボットかもしれない。
 その衝撃に打ちのめされ、誰もが言葉を失っていた。
 が、それにひたる間もなく、相手の声が響いた。
〈護送列車内でロボットの脱走を止めようとして撃たれた。ロボットたちはそのまま逃走した〉
「……まさか」
 凍りついたまま、ガッツマンが口だけ動かす。
〈テレビを見ただろう、あれらだ〉

  *  *  *

 階段を駆け下りるリーダーの後を追っていた二人の眼前を、横合いから駆け出してきた黒服たちがふさいだ。
 二人はちらりと視線を交わした。お互い、相手を助ける余裕はない。
 一人が両肩のブースターに点火し、ばっと黒服を飛び越えた。そのまま人々の頭上を越え、階段通路の天井すれすれを翔け下っていく。
 黒服たちの意識がそちらに向いた隙に、もう一人も動いた。こちらは身軽に黒服を跳び越え、反転して天井を蹴り、人々の群れの半畳の隙間に身を落とす、と思う間もなく電光の切り返しで僅かな階段を、壁を、天井の照明を次々に縫い、ごった返しの階段通路を逆落としに駆け下る。
 長い階段のどん詰まり、その床を足場に狙って壁を蹴った刹那、黒服たちが押し寄せてくるのを彼の目はとらえた。が、彼はためらわず加速ブースターに点火して黒服のど真ん中に突っ込んでいった。

  *  *  *

 不意に耳障りな警報音が鳴り響いた。
〈ご来場のお客様にご案内いたします。ただいま、隣接の○○駅構内に不審者が侵入したとの連絡が入りました。速やかに係員の誘導に従い、落ち着いて避難を……〉
(不審者?)
 妙なアナウンスに首をかしげたロールの脇で、カリンカが声を上げた。
「ロールさん、あれ!」
 カリンカが指差す先を目で追ったロールは息を呑んだ。
 眼下の吹き抜けに設置された大型モニターいっぱいに臨時ニュースが映っている。
〈……○○駅六番ホーム線路上に武装したロボット集団が現れ、そのまま駅構内を移動している模様です。国家安全省はワイリーロボットの疑いがあるとのコメントを発表しました。なお、ロボットポリスに発砲したとの未確認情報もはいっており……〉
 途端、真横の連絡通路から爆風、視界がブラックアウトした。

  *  *  *

 死んだような沈黙を破ったのは携帯電話の声だった。
〈ロックマンを死なせたのはこちらの不手際だ。しかし、自衛目的とは言え我々は実質、軍隊と同じだ。総理の許可がなければ動くことができない。……恥を忍んで助力をお願いする、あのロボットたちを止め、我々に引き渡していただきたい〉
「……言われるまでもねえ」
 低い声でつぶやいたのはボンバーマンだった。
「兄弟を殺されたんだ、黙ってられるか」
 殺された。
 その言葉はゆっくりと全員に広がり、染み通っていった。
「でも、よりによってワイリーロボだなんて……」
「だからオレたちが行くんだ」
 アイスマンの弱弱しい言葉に、カットマンが返した。
「絶対に、理由を聞き出してやる。場合によっちゃ」
 カットマンはそこで言葉を切り、拳を握った。
 そのとき、すぐ横のテレビからアナウンサーの声が響いた。
〈新しい情報がはいりました。えー、たった今新しい情報がはいりました。○○駅の武装ロボットの一部が改札を突破し、隣接の駅ビルに侵入した模様です。繰り返します……〉

  *  *  *

 ぐいと後ろ襟を持ち上げられる感覚で、ロールの意識は引き戻された。
 下のほうに床が見え、カリンカが倒れている。
(…………!?)
 慌てて顔を上げると、目の前に異様な姿が見えた。
 全身を覆う金属のアーマー、そのすすけて凹んだ傷跡。かすかに光るバスター。
 無感情な目。
 ――戦闘用ロボット!

  *  *  *

「ふざけるな」
 ファイヤーマンが吐き出した。
「ロックを死なせた上に、ロールにまで何かあってたまるか」
 これで決まりだった。
〈感謝する。現場は町中だ、これ以上の犠牲はなんとしてでも避けたい〉
「行くぞ」
 エレキマンが短く言い、一同は立ち上がった。


第二章 衝突

 ライトナンバーズが駆けつけると現場周辺はすでに封鎖され、ロボットポリスが遠巻きにビルを包囲している。
「あ、来てくれたか」
 車から降りた一同に、コサックナンバーズが駆け寄ってきた。
「お嬢様の行方がわからんのだ、ビルから出たのを見た人もおらんし」
 ダイブマンがいらいらとその辺を歩き回っている。
 近くにいたロボット警官が、ライトナンバーズに手短に説明した。
「ロボットは六番線を通過予定だった臨時の貨物列車内から線路上に現れました。そこからホームに上がって改札を突破し、南連絡通路を通ってこのビルに入りました。途中で食い止めようとしたのですが、建物の外に出さないのが精一杯で……」
「被害は?」
「ロボットポリスに八名、負傷者が出ました。いずれも相手の砲撃を受けたもので、重傷です」
「ビルの客はどうなってる」
「連絡通路付近にいた買い物客と店員、三十名ほどが人質になっている模様です」
 一同が絶句したとき、誰かが叫んだ。
「おい、報道にスッパ抜かれてるぞ」
 傍らのモニターを見ると、マイクに取り囲まれるドクター・コサックが映っている。
〈博士、お嬢様が中におられると伺いましたが、連絡はつきましたか?〉
〈……いえ、今警察の方に調べていただいているところです。失礼します〉
〈博士、何か一言〉
 コサックナンバーズに低いうめき声が流れた。
(くそ)
 エレキマンは舌打ちしてビルを見上げた。ロールとも連絡がついていない。
「相手の数は」
「じょ、情報を総合すると十体程度と思われますが、正確な数は不明です」
「不明? ロボットなんだろう、そんなことは」
 ボンバーマンが鋭く問い返す。
「いえ……分からないのです。原因は不明ですが、彼らだけセンサーに映らないのです」
「何? そんなことってあるかよ」
 すっと背筋が冷えた気がした。得体の知れないものを垣間見た心地だった。

  *  *  *

(……芳しくありませんわねえ)
 カリンカは、極力音を立てずに深呼吸した。冷静になろうと努めたが、抱えた膝が震える。
 そっと周囲を盗み見た。自分と同じく座り込んだ人がおそらく三十人ほど。
 その周囲に立つ影は、戦闘用ロボットである。
 が、その姿は、彼女が日夜見知った者たちとは遥かに遠く隔たっていた。
 全身の装甲はひどく傷つき、塗装はあちこちが剥がれ落ちている。さらに、ひどい損傷がそこかしこにあった。それも強い打撃による凹み、弾痕と思しい穴、鋭利な刃物によるコード断裂、えぐられたような欠損など、どれもこれも異常な傷だ。
 そして一人の例外もなく、無慈悲だった。
 彼女を含めたここにいる人質はみなたまたま連絡通路周辺にいて捕まったのだが、狩り立てられ方が尋常でなかった。まるで動物か物のように殴られ、引きずられて追い込まれたのだ。その度を越した情け容赦のなさに人質はみな震え上がり、半ば自分から大人しく集まり、じっと座っていた。
 不意に近くで悲鳴があがった。人質たちはびくりと顔を上げる。
 見ると、数名の警備員ロボットが隅に引きずられていく。そのうち一人の手足を戦闘用ロボット二人が押さえ、もう一人……牛のような姿をした大柄なロボットが、その片腕を掴んだ。
 彼女は思わず目を伏せた。嫌な音、身の毛もよだつ絶叫。
 もう一度そっと目を上げると、先ほどの牛型ロボットが警備員の腕を持っていた。
 ――引きちぎったのだ!
 ざあっと血の気が引いていくのが分かった。
 牛型のロボットは、人型のロボット……ロボットにしては珍しく長い髪を持った者に、その腕を差し出した。長い髪のロボットは無造作にそれを受け取って調べ……怪訝そうな顔になった。素早く腕の外装を剥ぎ、次いでコードを一本抜き取り、自分の身体の損傷部分に合わせたが、適合しないのか舌打ちしてそれを捨てた。
 そして彼は苛立ったように、他の戦闘用ロボットに何事かを命じた。たちまち他の警備員ロボットたちが同じように麻酔なしで解体され、容赦なく部品が抜き去られる。そこには一切の仮借もためらいもない。地獄絵図だった。
 歯の根も合わぬ震えが来る。
 と、カリンカの視界をすっと何かがふさいだ。はっと見上げると、ロボットの一人が見下ろしている。
 猫のような姿をした、彼女より幼いくらいの子供型だった。人間にすれば五歳そこそこだろう。
 だが、その表情。
 笑顔もなくあどけなさもなく、冷え冷えとした敵意だけがそこにあった。
 見るな、というのか、彼はぐいと彼女の髪を掴み、乱暴に下を向かせた。
 彼女は逆らわなかった。逆らう気力もなかった。
 およそ幼児のそんな顔ほど、見る者の心をおののかせるものはない。
 ああ、おそろしい。
 ただただそう思った。

  *  *  *

 一同が言葉を失ったそのとき、拡声器の声がわっと響いた。ガッツマンが見上げると、一台の飛行マシンが警察の制止をふりきって降り立つところである。
 その横腹についているマークを、彼は確かに見知っていた。
(……ワイリーマーク!)
 警官隊に混じり、ライトナンバーズもマシンに駆け寄った。
 中から降りてきたロボットに、リングマンがリングブーメランを突きつける。
「どういうことだッ、説明してもらおうか」
「あーもう、そいつを下ろせよ。聞きたいのはこっちだ」
 ロボット……ワイリーナンバーズ・メタルマンは、ぐるりと一同を見回した。
「今さっき臨時ニュースでおかしげな連中がドンパチやってるって聞いて、俺たちも泡喰ってるとこだ。しかも気づいたらウチのせいになっちまってるしよ」
「それじゃ……」
「そうだ。俺たちワイリーナンバーズは関わってないし、そもそも何も知らない。ウチの爺さんもだ。だいたい俺たちが町に手え出すときにゃ毎度直前に通達してるだろが。いきなり殴りこんで素人さんを人質なんて物騒な真似、したことあるかよ」
「……じゃ、あいつらは一体」
「さあな。どこのヤンチャ坊主か知らんが、やらかしてくれたもんだ。見過ごしに出来ねえんで、こうして来たってわけだ」
 メタルマンはビルを見上げた。
 ついでマシンから降りたクイックマンが、すいとエレキマンの横に立った。
「少々業腹だが、そちらが乗り込むならワイリーナンバーズは付き合う。ロックマンはあの爺さんの生き甲斐なんでな、消されたと聞いては捨て置けん」
「……おい、どこで聞いた」
 エレキマンは小声で聞き返した。
「企業秘密だ。……だが、それではナンだからこちらも手の内をひとつ、明かそう。ワイリー博士も、実は半月前に外出したまま行方不明なのだ」
「なに」
「行き先は言えんが、行ったきり連絡が途絶えた。……つまり博士のいない今、我々ワイリーナンバーズがこのビル占拠事件の汚名をそそぐには、自力でこうして出張ってくるしかなかったというわけでな」
「なるほど、オレたちと手を組んだ方が好都合か」
「そういうことだ。……ただし、博士の件はそちらの中だけの秘密にしてもらう」
「分かっている。ライト・コサックナンバーズ以外には漏らさん」
「感謝する」
 他に聞こえない声でそれだけの会話をすると、エレキマンは全員をぐるりと見渡した。
「ワイリーナンバーズが共闘を申し入れてきた。敵の素性が知れない今、呑んだほうが得策だとオレは思うが、どうだ」

  *  *  *

 この事態に関して、国家安全省と警察は急遽記者会見を開催した。
 それに合わせて各テレビ局は特番を組み、これまでの情報を総合した臨時ニュースをいっせいに伝えた。
 記者会見の場で国家安全省が明らかにしたところによると、現在立てこもっているロボットたちはいずれも第三国から密入国したと思われるロボットで、身柄確保して護送する途中に専用車両から脱走したという。
 そしてこの場で、ロックマンが護衛任務中にロボットに射殺された旨が正式に発表され、報道関係者に大きな衝撃を与えた。
 また国家安全省はロックマン射殺・ビル占拠にかんがみ、このロボットたちをテロリストと断定した。さらにワイリーロボットが本件に無関係であること、彼らが申し出たライト・コサック両ナンバーズとの共闘を今回に限り了承することを明言した。
 各局はロックマンが死亡したこと、ワイリーナンバーズとライト・コサックナンバーズが手を組んだことをメインの情報に据え、ヒーローの死を悼むとともに、事実上唯一の切り札となったこのタッグに大きな期待を寄せるコメントを相次いで流した。
 警察の記者会見では、ロボットたちの逃走経路と追跡の模様、ビル内での人質の様子が述べられた。
 護送列車からのロボット脱走の一報が国家安全省からもたらされてすぐ、警察は最寄りの○○駅に警官隊を向かわせたという。しかし配備と民間人の避難が間に合わず、混乱状態での立ち回りを余儀なくされた。結果、ロボットたちを建物から出さないことには成功したものの、駅ビルへの侵入を許してしまったという。
 警官に負傷者が出たことについて、ロボットたちの武装状況は国家安全省から伝えられていなかったと、担当者は語った。これに関して国家安全省は、装備や武装は調査前で、把握していなかった旨を述べた。
 そして、一部人質の身元も判明した。ロボット工学の第一人者ドクター・ライトの第二号ロボット・ロールと、同じくロボット工学界の俊英ドクター・コサックの一人娘カリンカがその中に含まれていた。
 また、「テロリストロボット」たちの現時点での情報も大きく伝えられた。
 国家安全省はロボットたちの数を十体前後と推定したが、各メディアの独自取材で、個々の詳細が断片的にしろ少しずつ分かってきた。
 長い髪を持つロボットが一体いるのを、駅にいた複数の客が覚えていた。「ロボットにしちゃ珍しいなあと思って」と、ある乗客は語った。
 ホームから階段を上がった先で大型ロボットがロボットポリスに発砲した瞬間の映像も、警察により公開された。撃たれた警官は頭脳チップこそ無事だったものの、いずれも行動不能なほどの重傷を負ったという。
 改札の外、駅ビルへの連絡通路に至る階段通路を「バーニア(正しくはブースター)でばーっと飛び越え」ていくロボット、「壁だの天井だのを忍者みたいに飛び移って」いく小さなロボットがいたと、居合わせた大勢の客が証言した。
 さらに別の一体は飛びかかったロボットポリスの目の前で液状に溶け、その姿のまま逃走したという。その他、同類と思われる複数の姿が防犯カメラの映像に残っており、いくつもの証言がそれを裏付けた。
 しかし彼らの正確な人数や容姿については、いまだに情報が錯綜している。
 犯人は謎のロボット、人質は最先端ロボット工学関係者、対応するのは公式・非公式問わず当代最高峰のロボットたち。真相はどうあれ、アイロニーだった。

  *  *  *

 真冬のくせに、真昼の日はじりじりと熱いように感じられた。
 目の前のビルは不気味に静まり返っている。犯人側からの接触は今のところ、要求も声明も一切ない。
 人質の状況も分からない。ビル警備会社が調べたところ、人質がいると思われる連絡通路周辺の防犯カメラはみな破壊されていた。しかもそのエリアはビルの隅に引っ込んでおり、そもそも目に付きにくいのだという。
 ともあれ、警察は拡声器をビルに向けた。人質の解放条件を聞きたい、今すぐ交渉に応じてください。雷のような声が響く。
 だが、ライトナンバーズもコサックナンバーズも、そしてワイリーナンバーズも、返事に期待などしていなかった。
 それは直感だが、ほとんど確信だった。同じく武器を持つロボットとしてそう感じたのだ。その上、民間人に危害を加えたものは彼らの中には皆無だったから、なおのこと確証が持てた。
 しかしそれでも、応答を願わずにはいられなかった。
 敵に回したくはなかった。何者かは分からないが洒落にならない相手だ。間違いなく。
 案の定、返事はなかった。

  *  *  *

 きっかり正午、国家安全省は突入を決め、現場に直通で指示した。

  *  *  *

「たった今指示が入りました。突入だそうです」
 警官がそう告げ、ナンバーズの間に言い知れぬ緊張がよぎった。
 突入組はスネークマン(索敵)、ガッツマン(人質保護)、ストーンマン(人質保護)、ブライトマン(広域攻撃)、トードマン(広域攻撃)、ファイヤーマン(遊撃)。裏口から侵入するため、これ以上の人数では行けない。
 建物内部の3Dマップが全員に伝送される。メンバーの現在地と目的地がリアルタイムで脳内に送られる仕組みだった。
 気をつけろよ。短い言葉を交わし、そっと社員通用門に近づく。
 スネークマンが扉を細く開け、サーチスネークを走らせた。
「……異常なしだ。行くぜ」
 一同は、扉からそっと身を滑り込ませた。

*  *  *

 しかし、ぞっとしねえな。スネークマンは心中で舌打ちした。
 数階上の南側に二十近い反応。これは人間のものだ。そして十あまりの異なる反応。これはロボット。武器の反応はないから、いずれも人質だ。
 が、それだけだった。
 その場に間違いなくいる、肝心の戦闘用ロボットだけは感知できない。ぎりぎりまでサーチスネークを寄せて振動を捉えるか目視させるかしかなかった。
 だがそれは同時に、相手に先に感づかれる危険性をも孕んでいる。
 狭い非常階段下に一同がようやく身を潜め、スネークマンがさらに先を調べようとした時。
 あ、とブライトマンが息を呑んだ。
「どうしたッ」
 一同が見上げると、すぐ頭上の踊り場から覗く顔と目が合った。
「…………!」
 相手はひょいと頭を引っ込めた。
「ちッ、見つかった。追うぞ」
 本隊に知らされる前に捕らえなければならない。一同はできるだけ足音を殺し、階段を駆け上った。
 前を逃げていく相手は猫を模した子供型のロボットで、怪我でもしているのか片足を引きずり引きずり、必死で逃げていく。が、そのスピードは速くなく、時折振り返る顔が恐怖にこわばっている。
 追いかける一同と、その差が徐々に縮まっていき……
「こいつめ」
 ガッツマンがその足を引っ掴もうと腕を延ばした、その瞬間。
 相手がぱっと大きく跳ね、五段ほどを飛び越して次の踊り場に上がった。
 同時にガッツマンが足をかけた段が抜け、他の一同が乗っている部分もろとも階下に墜落した。

  *  *  *

 うわああああっ、聞き覚えのある悲鳴がビル内から響き、何かの落ちる大音響が続いた。
 ビルの外に戦慄が走った。
 まさか。

  *  *  *

 いやというほど身体を打ちつけ、それでもファイヤーマンが起き上がると、頭上に影が動いた。
 ぞっとして見上げた真上、二階の扉に人の姿。その長い髪。
 凍てつくような目。
 まずい。
 思う間もなく、その横の壁がこちら側に外れ、落ちかかってきた。
「逃げろ」
 叫んで身をかわした途端、壁が降ってきた。慌てて腕を挙げたガッツマンがちらりと視界に入った。
 轟音。
 同時に激痛。下敷きは免れたが、左足が挟まれている。なすすべなく上に目を走らせた彼は、壁のそっくり抜けた二階部分にいくつもの人影を見た。
 途端、そこから無数の石つぶて。わあっと頭を抱えたが、それらは容赦なく彼と、難を逃れたほかのロボットたちの頭上に降り注ぐ。がしゃんと音、悲鳴。ブライトマンの電球が粉々に砕けた。
 次いで大きな影……牛のような姿のロボットが、別の壁を外すのが見えた。
 くそ。あのチビ助、ハメたな。
 その壁が頭上をふさぐ瞬間、彼はようやく悟った。

  *  *  *

 ほうほうの体でビルの外に出たのはスネークマン一人だった。
「スネーク! 他の連中は」
「……やられた。全員、壁の下敷きだ」
「下敷き!?」
「死んじゃいねえ。死んじゃいねえがすぐには助けられねえ。……連中、読んでやがった」
 スネークマンは歯噛みした。
「見張りのチビに誘導されてあのザマよ。連係の取れた野郎どもだ、俺たちみてえな寄せ集めじゃ話にならねえ」
「くそっ、こうなりゃ数で押すしかないか。この人数なら一人一人引き離せば」
 口を開いたエアーマンにスネークマンは怒鳴った。
「バカ野郎、そんな甘くねえよ」
「しかし」
「なめて掛かるんじゃねえって言ってんだ、俺たちを殺そうとしやがったんだぞ! ストーンとガッツがいなきゃ死んでた!」
 その言葉は、一同を重く打ちのめした。
 戦う相手への殺意。それまで彼らが知っているどんな戦いにも、それはあったためしがなかった。あっていいはずはなかった。
 が、その常識はもはや通じない。そういう相手なのだ。
 第一回戦はこちらの完敗だった。
 畜生。
 誰かが低くうめいた。その呪詛はどす黒く、全員に伝染していくようだった。
 唐突に、その空気を引き裂くような破裂音が響いた。
「銃声だッ」
 誰かが叫び、一同は色めきたって立ち上がった。
 わあっと大勢の悲鳴。見ると、ビルの正面玄関から何人もの人が駆け出してくるのが目に飛び込んだ。
 みな足をもつらせ、転びそうになりながら必死に駆けてくる。
 泡を食った警官隊が走っていく。
 待ってくれ、人質だ! その騒ぎの中から、叫ぶ声がした。
「人質?」
 人質となっていた人々が解放されたというのか。
 だが、なぜ。狙いが分からず、一同は呆然と立ちすくんだ。


(続く)
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